怖話動画・題材シナリオ

夢見る恐ろしさ ろこも
 田舎で育った私は幼い頃から女優になる夢があり、高校生の頃から様々なオーディションを受けてきた。しかしそれらを通じて自分に才能がないことに気づいた。そして自分の中ではもう女優の夢はきっぱり諦め、今後志すこともないだろうと思っていた。
 しかしある日、繁華街を歩いている時、突然後ろから声をかけられた。「すみません、女優に興味ありませんか」と。20代前半くらいのスーツに身を包んでいる男性だった。
 私のことをまるで1000年に一度の逸材のように褒めてくれたことで、私は大きな誤ちを犯してしまった。近くの喫茶店で話がしたいとのことだったのでついていった。
 彼の説明では、事務所の養成所に数ヶ月通った後に本格的に女優として活動できるそうだ。そこで宣材写真と養成所に入るための費用、計6万円が必要だとのこと。こんなにも夢破れた私を必要としてくれるチャンスはこの先ないと思い私は入会を決め、バイトで稼いだ6万円を支払った。
 後日都内のレッスン場にメールを通じて呼び出された。レッスンは発声練習や演技指導などシンプルなものだった。レッスンを終え、私は事務所の社長に私の声を聞きたいとカラオケに誘われた。しかしボックスの中に入った途端、社長の態度は一変した。私の腰に腕を回し、肉体的な関係を求められた。
 いくら社長とはいえ私は断ったが、すぐに活動できる、活動費を出すなど様々な理由をつけて私に関係を迫ってきた。恐怖により思うように動かない自分の体を必死で動かし、なんとかその場を逃げ出した。耳の奥には社長の気持ち悪い声が残っていた。
 全力疾走で家に帰り、私は急いでその養成所の解約手続きを行った。その時、私はやっと自分が騙されていたのだということに気がついた。私に声をかけてきたのは夢見る若者から少額ながらも、お金を搾取する悪徳芸能事務所だったのだ。

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